テロリストのパラソル
本|
2006-11-21(火) 23:59
最近,面白かった本は藤原伊織の「テロリストのパラソル」。アル中のバーテン,島村がいつものように白昼,新宿中央公園でウイスキーを飲んでいるころに起こった爆弾テロ事件。爆心地での惨状を目にした島村はそのまま逃げ去り,ホームレスに紛れて身を隠す。犠牲者の中にはかつての恋人,優子が含まれていた。その細い線から次々に明かされる島村の過去と人間関係。テロリストの目的は?島村との関係は如何に?
アル中だけどタフガイの島村。バーで彼が唯一出す料理がホットドッグで,これが本当においしそう!この小説,日本人が日本を代表する街である新宿を舞台に書いた小説にもかかわらず,全体に翻訳物を思わせる雰囲気が漂っています。冒頭の爆弾テロからどういう方向にストーリーが展開するのか,アル中の島村が何を目的に行動しているのかが全く読めません。巧みに隠されているのですが,読んでいて背筋がゾクゾクしました。
SF小説以外でこういったセンスオブワンダーに溢れた作品は貴重です。それと脇役達。知性派やくざの浅井,バイオリンを弾く少女,犠牲者の息子である帰国少年,そして松下塔子ほか登場人物が皆,魅力的に描かれています。会話もすごくおしゃれ。次もまたこの人の書いた小説を読んでみたい,と思わせる作品でした。
「テロリストのパラソル」は2001年に江戸川乱歩賞と直木賞を同時に受賞しました。そして1948年生まれである藤原伊織さんは現在,ガンで闘病中とのこと。一日も早く回復されることをお祈りしています。





